前書き より抜粋
「ほんとう私のマンションは大丈夫でしょうか?」
最近は私のもとに毎日のようにこういった質問が数多く寄せられるようになってきました。もちろん、できるだけお答えするようにしていますが、すべての方に答えするのは時間的制約もあり、難しいのが現状です。
“耐震強度偽装”はいうまでもなく重大な犯罪行為です。決して許されるべきことではありません。関係者の多くは言い逃れに必死ですが、やっていることは詐欺行為そのもの。だまされた住人の方々は、まちがいなく被害者です。しかし、こういった悪質な業者は今後も消えることはなく、ほとぼりが冷めるのを待っていたかのように、再び登場してくるであろうことは、過去の事例が教えてくれています。
リフォーム詐欺なども同様ですが、そうした業者の本音は決まり文句のよう「だまされた側も悪いんだ」・・・・・・。
なんとも腹が立つ言い分ですが、そんな呆れた理屈がまかり通っているのが社会の現実、といえるのかもしれません。
ではどうしたらだまされないように“自己防衛”することができるか。それがこの本の第一のテーマです。本書には、悪質な業者をどうやって見分けるか、最初から欠陥だとわかっているマンションやビルをどうすれば見抜くことができるか、というノウハウが書かれています。
建物の基本的な構造についても、できるだけわかりやすく解説しているので、丈夫な建物かどうかを知る確かな知識が得られるはずです。
そして、もうひとつの大きなテーマが“安全性”です。マンションやビルの安全性は、“耐震強度偽装”だけでなく“建物の老朽化”という面からも脅かされつつあります。
震度5強の地震で倒壊の恐れがある耐震強度不足の“老朽化したマンションやビル”は全国で120万棟あるといわれています。こうした現状のなかで「万が一のとき、どうやって身の安全を確保するか」ということについても、阪神・淡路大震災での被害調査データをもとに、解説していきます。
もし、あなたがモデルルームにいく機会があったなら、この本を小脇に抱えて見学してみてください。悪質な販売業者はギョッとするかもしれませんが、真面目な業者ならばより詳しく、熱心な対応をしてくれることでしょう。
本書をお読みいただき、ひとりでも多くの皆さんが安全性にたいする考え方を再認識し、そして自己防衛力を身につけてほしい・・・・・・いただきたい。それが私の願いです。
染谷秀人
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